[メイン2]
高鴨穏乃 :
そうして島探検に出た私達。
まさしく自然の大宝庫であるそこは、そこら中が緑で覆われていて、人が進む道も当然なくて。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
天井も緑一面で覆われた、グリーンな世界にいるようで
それでいてあたりから土の匂いも香ってきて
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「すごい険しい道だけど……!愛さん!大丈夫ですか!?」
水着姿のまま、草木を掻き分けて進んでいく。
[メイン2]
宮下 愛 :
「……ふう、っ、ふぅう……」
汗だく、時々目に入りそうになる汗を腕で拭いて。
[メイン2] 宮下 愛 : 「これは中々…!愛さん、森…舐めてたわ……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「や、やっぱり大変そう……?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 心配そうに、愛を見つめながら。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「ちょっと休憩できそうな場所とか、探しますか……?」
辺りをキョロキョロと見渡すと……。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……!! 見てください!愛さん!あれ!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ある方向を指差す。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……いや、大丈夫!全然愛さん、がんばれ……ん?」
[メイン2] 宮下 愛 : ちらり、とシズの向いた方へと。
[メイン2] 高鴨穏乃 : そこには─────。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 少し寂れた、木造の家、のようなものがあった。
[メイン2] 高鴨穏乃 : もっとも、そこには人の気配など無いが……。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あそこなら……雨風とか、凌げそうかも……!?」
[メイン2]
宮下 愛 :
「わ、わわ……!これって、もしかして人が住んでたり…?」
ごくり、とカラカラの喉を鳴らしつつ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「…た、確かに!また嵐とか来る、なんてあったら嫌だしね」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「そうかもですね……!行ってみましょう愛さん!」
愛の腕を引っ張り、その家の方へ駆けだす。
[メイン2]
宮下 愛 :
「わわわっ!!!」
その腕の方に、引っ張られていく。勢いのあまり、転びそうになりながらも。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
小柄ながらも、その力は強く
そして逞しく。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「はぁ!はぁ!……わ……間近で見ると……そこそこ大きいですね……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 寂れた家を見上げながら、その出入り口のドアを、ぎぃぃ、と開ける。
[メイン2]
宮下 愛 :
……あれ、シズってこんな……力、強かったっけ…
そういえば、離れ離れになるときも……ぎゅっと捕まってたような……
[メイン2] 宮下 愛 : 「…!あ、うん……だね、中に何か残ってないかな?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「………」
無言のまま、首を横に振り。
[メイン2] 宮下 愛 : 扉の後、ゆっくりと辺りを見まわす。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……何も、無さそうですね……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
床を少し強めに足で蹴ってみる。
腐食が進んでいるとはいえ、まだ頑丈そうで。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ここなら……うん、大丈夫そう、ですね……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「人は……残念ながら、いませんでしたが……」
[メイン2] 宮下 愛 : 「ん~……そっか、残念……」
[メイン2] 宮下 愛 : 「ま、でも……痕がある、ってわかっただけでも進歩だよ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 少ししょぼくれた表情をしながらも。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……そう、ですね……!」
[メイン2] 宮下 愛 : ぎいい、と中へと進んでいく。
[メイン2] 高鴨穏乃 : えへへ、やっぱり愛さんは……なんだか、お姉さんって感じが、するなぁ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
私も私で、心細い気持ちは、どこかにあったっていうか……。
いや……今でも普通に、キツいから……。
[メイン2]
宮下 愛 :
「うん、これは見つけたシズのお手柄だからね~」
また、頭をよしよしと撫でつつ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
もしかしたら、もう二度と家に帰れないかもしれない、だなんて……。
そういう考えが、頭の中に過りながら。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「あうぅ……え、えへへ……」
気持ちよさそうに、子犬のように喜びながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あ……じ、じゃあ!このまま!洞窟とか探しましょう!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「愛さん、喉乾いてそうですし……そうしましょう!早めに見つけないと……!!」
[メイン2] 宮下 愛 : ふふっ、相変わらず可愛いな~。にやにやとした顔で。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 焦るように、家を飛び出そうとし─────。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あっ……!?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ガッ、と足元に木片が当たり、体勢が崩れ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「…ん、ちょっと待って、もう少しだけ────え?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : そのまま、ゴロゴロと転んでしまう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「うわぁああぁっ……!?!……ったぁ……いっ……たぁ………」
[メイン2]
宮下 愛 :
「……っ!!!」
思わず咄嗟に、そちらの方へと駆けだしてしまう。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
膝を抱えながら、痛みを堪える。
じんわりと、涙を浮かばせながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あ、い……さん……ぅ、ぅぅ………」
[メイン2] 宮下 愛 : 「っ、シズッ…!!どこ怪我したのっ!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぅぅ………だ、大丈夫、ですから……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 心配かけまいと、よろよろと立ち上がろうとするも。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 膝に、真っ赤な血が。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 擦りむいてしまったようだ。
[メイン2] 宮下 愛 : あ、っ…バカバカッ!浮かれてる場合じゃなかった、約束したのは誰だったんだ…。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……シズ…いや、穏乃」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぅっ………は、は、い………」
[メイン2] 宮下 愛 : ぎゅっと、出ようとする彼女の肩を掴む。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あっ………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ふんわりと、柔らかで、暖かな感触に包まれる。
[メイン2] 宮下 愛 : 「まったくもう、だーめ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 心地良くて、気持ちよくて………安心してしまうような。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぁ、あうぅ………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……ごめん、なさい………」
[メイン2]
宮下 愛 :
いつもの飄々とした顔…でなく、優しく。
ゆっくりと語り掛けて。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
心のどこかにあった心細さをぶつけるように
愛に、甘えるように抱き着く。
[メイン2]
宮下 愛 :
……シズは直感がいい子だ。自分をわざとおどけることで、みんなの雰囲気を保とうとしてるんだろう……。
きっと、今も……不安でたまらないはず、なのに。
[メイン2]
宮下 愛 :
「よしよし……ちょっと待ってね」
安心させるために、背中を撫でながら。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
ぎゅっと、より強く抱き締める。
無言のまま、こくりと頷きながら。
[メイン2] 宮下 愛 : きょろきょろと辺りを見回す。…シズの言う通り、ここには何もない……。
[メイン2]
宮下 愛 :
「……まあ仕方ないから、いっか」
胸の方の水着を脱ぎ。シズの傷跡へと当てて。
[メイン2] 宮下 愛 : 「…きつく縛るから、痛かったら言ってね?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「……ふぇっ……!?」
ドキン、と心臓が跳ね上がる、何故か。
[メイン2]
宮下 愛 :
砂や埃を落として、ぎゅっ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「あ、愛さんっ……!?む、胸が!あわわわ……!」
顔が真っ赤に染まっていく。
さっきは、自分の裸体を晒しても何とも思わなかったのに。
[メイン2] 宮下 愛 : 足へと、布を縛る。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
こうして愛さんの、柔らかそうで、大きな胸の膨らみがこうして露わになると……。
どうしても、直視ができず。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「ぅ、ぅぅ………ありがとう、ございます……」
恥ずかしそうにしながらも、小声でお礼を。
[メイン2]
宮下 愛 :
「えっ?あー、愛さんのダイナマイトボディが見えちゃったね!いやいや、シズ第一だからさ」
冗談めかして言いつつも。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「む、むぅぅ………!……嬉しい、ですけど……ちょっぴり、恥ずかしい…です……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………愛さんって、すごく……優しい、ですよね……」
[メイン2]
宮下 愛 :
……んん……少し裸になった、けど…スース―するのは確かだし、んん……
なんか、こう……身震いする……?もやもやするような、ヘンな気分……
[メイン2] 宮下 愛 : …シズがいるから……?
[メイン2] 宮下 愛 : 「…んえ、愛さん?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「スクールアイドルだから……とか、ですか……?」
誰にでも優しい、それはアイドルだから?
という、そういった意味を込めた問いで。
[メイン2] 宮下 愛 : 頬の赤みを照らしながら、ふいに掛けられた言葉に、ハッと。
[メイン2] 宮下 愛 : 「ん~~~」
[メイン2] 宮下 愛 : 「それはちょっと、違うかなぁ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「むっ……そうなんですか……?」
[メイン2] 宮下 愛 : 「愛さんね、ズルいから…楽しい、ってことがしたいの」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
楽しい……。
こんな状況下でも、"楽しい"を……。
[メイン2] 宮下 愛 : 「それだけでやりたい!みんなといるのは、楽しいから、ならそれがずっと続くようにしたいし────」
[メイン2] 宮下 愛 : 「────そう思わないと、やってられないじゃん」
[メイン2] 宮下 愛 : ふう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「…………!!」
[メイン2]
宮下 愛 :
その目は、微笑んではいたが。
いつもとはまた違うような笑い。
[メイン2] 高鴨穏乃 : その愛さんの答えに、ハッとしたような表情を。
[メイン2] 宮下 愛 : まるで、”疲れている”ような。
[メイン2]
宮下 愛 :
愛さんだって、不安がないわけじゃない。家に帰りたい気持ちだってある。
何が起こるかわからない場所、不安で仕方ない。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
そうだ……私は、一人じゃないんだ、みんながいる、だから……頑張れてるんだ。
それを忘れちゃいけないんだ……!
それに……みんなと一緒にいる時間を楽しいって思えないようになっちゃったら
[メイン2] 高鴨穏乃 : それはもう……おしまいなんだ……。
[メイン2] 高鴨穏乃 : その答えを噛み締めながらも、愛の表情を見つめる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………?……愛、さん……?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 笑顔を見せても、その奥は─────笑顔じゃない。
[メイン2]
宮下 愛 :
でも、ここは無人島。
何が”100点”の行動なのか、優等生の愛には全く、わからない。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
……ああ、そうか、そうだよ。
だって、当たり前だよ。
[メイン2] 宮下 愛 : 真面目にやっても仕方ないなら、どうすればいいんだろう。
[メイン2] 宮下 愛 : ……楽しんで、不安を紛らわすしかない。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
私が、もうお父さんやお母さんに会えないことに寂しさとか、怖さとか
苦しさとか、色々な想いを抱えてるのと同じように─────。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛さんだって……苦しいんだ。
[メイン2] 宮下 愛 : 目を向けられて、パッと、手を振る。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
だったら、そうだよ……!
私がこうして沈んでいたら、愛さんの"楽しさ"が、失われちゃう!
[メイン2] 高鴨穏乃 : だから!
[メイン2] 宮下 愛 : 「……あ、ごめんごめん!今のなし!オフレコってことで!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………え、えいっ!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛を、ぎゅっと抱きしめる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : なんだかよく分からないが、そうしてしまった。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
愛の柔らかな、大きな胸の膨らみが、自分の方にも当たって
……ドキドキが、加速しながらも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「あ……っ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「さ、さっきは!弱音吐いて……ごめんなさい!でも……もう!大丈夫です!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「私も……!オリハさんに、美月さん……それに……!」
[メイン2]
宮下 愛 :
声が漏れる、ゆったりと。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「愛さんと一緒にいるの……すっごく、"楽しい"ですから……!!」
[メイン2]
宮下 愛 :
抱き締められる、そんな行為は。
初めてだった、自分からそうすることが多かったから。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「そうですよね!!だから、だから……!もう、いっそ……この、無人の島で、4人で仲良く暮らすことになっちゃっても……それはそれで、きっと楽しいですよね!!」
[メイン2] 宮下 愛 : ……なんか、暖かい気がする……。えへへへ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……シズ…」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
現実逃避じみた理論。
どこか退廃的な考え方。
[メイン2] 高鴨穏乃 : それでも─────"傷"を舐めあうには、十分なはず。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……え、えへへ……ダメ、ですかね……?」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……」
[メイン2] 宮下 愛 : ぽん、と頭に手を置き。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……じゃあ聞くけど、シズはそうしたいの?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「むぇっ……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 言葉が詰まる。
[メイン2] 宮下 愛 : 「愛さんたちじゃない、もっとほかの友だち……それに、家族」
[メイン2] 高鴨穏乃 : わ、私は……私は…………。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……欲を言えば……帰りたいです……みんなに、会いたいです……」
[メイン2] 宮下 愛 : 「その人たちと本当に────……。」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「でも、弱音を吐いちゃったら……"楽しくない"……そう、ですよね……?」
[メイン2] 宮下 愛 : その質問を聞いて、こちらの顔が…少し、歪む。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……シズはいい子だね、ほーんと」
[メイン2] 宮下 愛 : 「みんなの事を考えて、愛さんの事も気遣ってくれてて……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「え、えへへへ……」
頬が緩む、こうして愛さんと話しているだけでも
膝の傷の痛みが忘れられるようで。
[メイン2]
宮下 愛 :
「…でもさ」
置いたままの手で、シズの髪をぐちゃぐちゃにする。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
膝だけじゃない、胸の辺りにある、ズキズキとした
表現しようにもできない、おっきい不安とかも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「それでシズが無理しちゃうのも、愛さん嫌だな~」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「うわぁっ……!?」
ぐしゃぐしゃにされて驚きながらも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「だからさ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「そ、それじゃあ……!どうしたらいいんですか……!?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ぷくぅ!と頬を膨らませながら。
[メイン2] 宮下 愛 : じっと、シズの瞳を見て。ちょっとほっぺ突きつつ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「────二人だけの秘密、にしない?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ぷしゅ~、と口から空気が漏れ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……ふぇ……?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ひみつ?
[メイン2] 宮下 愛 : 「この家を見つけたのも、何かの縁ってことで~」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「えっ……!?で、でも……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : オリハと美月の顔が脳裏に浮かぶ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「それじゃあ……二人に、申し訳ないですよ……!?」
あたふたと。
[メイン2] 宮下 愛 : 「ん~、それはそうだね!」
[メイン2] 宮下 愛 : うんうん、と頷く。
[メイン2] 宮下 愛 : 「まあでも、さ……この困難の山はおっきいんだ、乗り越えるのも一苦労なら……」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……ちょっと、ズルしちゃってもいいんじゃない?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「む、むぅ………」
[メイン2]
宮下 愛 :
ちょっと、からかってみる。
楽しげな顔で、にやりと。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
少し間に受けたように、真剣な表情をし
数秒間だけ黙り、色々と考え。
[メイン2] 宮下 愛 : 「まあ、気が向いたらでいいよ~?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
そうして、顔を上げ
愛の黄色い瞳を見つめ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「─────それは、やっぱり駄目ですっ!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : きっぱりと、強くそう言い告げる。
[メイン2] 宮下 愛 : 「………ありゃ、フラれちゃった」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「私は……愛さんの言う、"楽しい"のために頑張るその姿と言いますか……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「そこは、私も……すっごく、納得できましたし……何より、前よりも、ずっと尊敬できるようになりました……!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ずいっ、と距離を縮めながら。
[メイン2]
宮下 愛 :
その言葉を受けて、内心は…驚いていた。
……まさか、シズが……でも、はっきりと…言えるなんて。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「だからこそ……!!私も……楽しくしたいんです!なるべく……!!」
[メイン2]
宮下 愛 :
「……」
その気迫に、思わず後ずさる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「みんなの心が沈まないように……私も、もう……弱音とか、吐かないように……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛の腕を、掴む。
[メイン2] 高鴨穏乃 : そして、逃げないように引っ張り。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「だから─────やっぱり、みんなで"楽しみ"ましょうよ!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……っ!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……みんなで────?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ね? と無邪気な、純粋な笑顔を見せながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「はい! ……この無人島サバイバル……一人だけじゃなく」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「二人だけでもなく……!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「みんなで!!楽しみながら、乗り越えちゃいましょうよ!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……どう、でしょうか……?」
[メイン2]
宮下 愛 :
ハッと、口が開く。
[メイン2]
宮下 愛 :
……そ、っか。愛さんは、自分が楽しい事を目的にしすぎちゃったのかな。
現実逃避、とか……ちょっとダメな方向に、ズレてたかも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……」
[メイン2] 宮下 愛 : ぱちん、とほっぺを叩く。
[メイン2] 宮下 愛 : 「うん、誰かが、じゃなくって…みんなも楽しめたらもっとサイコーだよね」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……そだね、シズ……ありがと!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「えへへへ……!やっぱり、愛さんも……そういう顔が、似合います!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : そう言い、愛のほっぺを、むにゅっと摘まんでみせる。
[メイン2]
宮下 愛 :
「むあっ……」
むにゅん、思わずほっぺが伸びる。笑顔の形になって。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「生意気な年下かもしれませんが……愛さんも!もし何か……不安なことがありましたら……是非!私に相談とかしてくれると……ありがたいです!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : むに~!とほっぺといじりながら。
[メイン2] 宮下 愛 : 「こ、こらこら!愛さんで遊ぶのは禁止だよっ!?」
[メイン2] 宮下 愛 : のびーーん、と伸びつつも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「…うん、そうだね…シズもそうだし────みんなにも、ちゃんと相談するよ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「えへへ!ごめんなさい! ……はい!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 『太陽』のような笑顔を見せる。
[メイン2]
宮下 愛 :
その笑顔に、今度こそ。
満面の笑みで返しつつ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「相談のためにも、ソーダでも飲みたい気分だよ~」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 思考が一瞬停止する。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 相談で、ソーダ?むむ??
[メイン2] 高鴨穏乃 : む???
[メイン2] 宮下 愛 : 「……」
[メイン2]
宮下 愛 :
う~~ん。シズに降ったのは間違いだったかも。
いや間違いだ、今完全フリーズしてるじゃん。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「え、えっとじゃあ……ソーダ、飲みたいなら……砂浜にいっぱい落ちてたスーツケースの中に、もしかしたらあるかも……ですかね……?」
[メイン2] 宮下 愛 : デジャブ。愛さんこれ見たよ、船の上で。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 全く理解していないような反応を示す。
[メイン2] 宮下 愛 : 「そっ、そそ…そうだね……あはは…ソーダ……だけに…」
[メイン2]
宮下 愛 :
あ、ああ~~~……口から止まらない!!
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「そうだ、ソーダ………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あ~~~~~~~!!!」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「これ!!ダジャレだったんですね!?!?」
目をキラキラとさせながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「やっぱり………愛さんは!!!すんごい!!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「う、ぅうう~~~~!!!!」
[メイン2]
宮下 愛 :
また、顔を赤くしながら。
唇が微振動。
[メイン2] 宮下 愛 : 「も、もう!!行くからね!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「もんっ!!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……む~~……シズはお仕置きで愛さんの前、歩いてね」
[メイン2] 宮下 愛 : そうやって、胸を隠すために後ろに行きつつ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あ、そういえば愛さん……お胸が……そうでしたね」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ちらりとまた、愛の胸の膨らみを見て。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 少し顔を赤らめながら、目を逸らし、先頭を進んでいく。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
擦りむいてしまった膝の傷の応急処置をするためにも
愛さんの新しい水着を物色するためにも
一旦、砂浜の方へと戻るのであった─────。
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2]
宮下 愛 :
人生山あり谷あり、とは言うけど~
[メイン2]
宮下 愛 :
山、大きすぎだよ。
[メイン2]
宮下 愛 :
ま、だからこそ……”みんな”で登るのかもしれない、けどね?
[メイン2] 宮下 愛 : シズも…いい事言うじゃん。
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「────ぶはぁっ!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 海の中から顔を出す穏乃。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
十字架を探すために、海へ潜っていたのだ。
水着を着ていたという利点が、ここで生きた。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「はぁっ……!はぁっ……!全然見つかんない……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「愛さん〜!そっちはどう〜!?」
[メイン2] 宮下 愛 : 「こっちも探してるけど、全然!」
[メイン2] 宮下 愛 : 愛はというと、浅瀬で探していた。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
辺りはすっかり日が沈んでおり
無人島における夜は……。
[メイン2]
宮下 愛 :
体力を使う深瀬はシズに任せ、自らは浅い所……という魂胆だったが。
生憎時刻は夜。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
夜空に輝く星々と月のみしか、頼れる光が無い。
そういった状況であり、穏乃も若干焦りを感じ始めていた。
[メイン2] 宮下 愛 : 「こんな暗いと、見つかるもんも見つからないよ~…!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「そっかぁ……まずいなぁ……!」
[メイン2] 宮下 愛 : 懐中電灯を照らしながらも、ちかちかと点滅し始めている。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「うん……そうだね………!そろそろ上がらないと、本格的に暗くなっちゃうかも……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……っ……!?ま、まずい……!?」
[メイン2]
宮下 愛 :
「やばば、シズも怪我してるんだから、無理はダメだよ!?」
残された光に焦りつつも、最後までの光をシズへと向けて、安否確認。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
夕刻ということもあり、これまで満ち潮だった海が
段々と引き潮になっていき……。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「やっば……!?な、流されるかも……!?う、うおぉおおおっ!!」
[メイン2] 宮下 愛 : バッ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
ばしゃばしゃばしゃ!!と必死に、沖の方へ
愛の方へと泳ぐ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 沈んでいく太陽を、暖かな光を求めるように。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 手を、うんと伸ばす。
[メイン2]
宮下 愛 :
体力を使っているだとか、水着だとか……。
そんなものを忘れて、海へと飛び込む。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
口の中に海水が流れ込んでくるッ……!?
おえっ……!しょっぱ……!!
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「っ……!!愛ざんっ……!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : 手を、うんと伸ばす。
[メイン2] 宮下 愛 : 落ちかけようとする月を、まだ落ちないでと願うように。
[メイン2] 宮下 愛 : 「ぶはっ……!!ごほっ、シズッ…!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「がほっ……!!ごぼぼっ……!!あ……愛!ざんっ……!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : せき込みながらも、しっかりとシズへと手を向け────
[メイン2] 宮下 愛 : ────ガシッ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
目に、耳に、口に、引き潮によって海水が流れ込んで来ながらも
激流に逆らい、必死に!!
そして………掴むッ!
[メイン2] 高鴨穏乃 : ─────暖かな、感触。
[メイン2]
宮下 愛 :
……掴んだ……!!
…小さい、愛さんのもの…よりも……!
[メイン2]
高鴨穏乃 :
ま、まだだ!まだ安心しちゃダメだ……!!
もっと、もっと泳がないと……!!!
愛さんを巻き込んじゃわないように……!!
[メイン2] 宮下 愛 : ……だから、絶対に……流されないように……!!
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「う、うおぉぉおおぉおおぉぉぉおおぉおおおおっっ!!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ばしゃばしゃばしゃ!!と必死に泳ぐ。
[メイン2]
宮下 愛 :
今度は、海に飲み込まれない……!!
大切な友だちを……手放してて……たまるか……!!
[メイン2] 宮下 愛 : ざぱざぱ、音を立てて泳ぐ、泳ぐ。
[メイン2]
宮下 愛 :
「ふっあ、ああああっ……!!!」
ぎゅっと、掴んだ手の温もりだけは離さずに、そして。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
冷たい海水に体温を、体力を奪われていきながらも
泳ぐスピードが徐々に落ちていってしまいながらも。
[メイン2] 宮下 愛 : 「………!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : シズ、勢いが……!あ、ああもう……!!何を、迷ってるの……!!
[メイン2] 高鴨穏乃 : なんとか、最後の気力を振り絞り────。
[メイン2] 宮下 愛 : 隣人、友だち”みんな”で、愛する……それが、愛さんの────。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 帰るんだ………!一緒に、愛さんと………!!
[メイン2]
宮下 愛 :
手を伸ばし、腕を伸ばし、体を伸ばして。
ぎゅう。と抱きしめて。
[メイン2] 宮下 愛 : 「────ぷはっ!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : ざぱん、海上へと。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぶはっ………!!」
[メイン2] 宮下 愛 : 最初の時と似た、打ち上げられたかのように、砂浜へと身を転がして。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
愛の、『太陽』のような温もりに包まれながらも
なんとか沖に上がり……。
[メイン2] 高鴨穏乃 : そのまま───意識を、失ってしまう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ごほっ………かほっ………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : いや、正確には────海水を、飲み込みすぎてしまったからだ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「し、シズ……!?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
愛が声をかけるも、穏乃はぐったりとした表情で
力が抜けたように、砂浜に転がったままで。
[メイン2]
宮下 愛 :
なんとか、体を起こしてシズへと顔を向けると……
そこには、ぜえぜえと横たわる、元気のない…彼女の姿。
[メイン2]
宮下 愛 :
「こ、これ……!し、シズ…しっかりして…!」
ドラマとかでも見た、これってもしかして……海水がのどに詰まって、窒息している……
[メイン2] 宮下 愛 : 思わず、彼女の体を揺さぶるが。
[メイン2] 高鴨穏乃 : そう、穏乃は─────呼吸困難な状態になってしまっている。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
体を揺さぶられるも、意識が戻ることもなく
目を閉じたまま、虚ろな状態に……。
[メイン2] 宮下 愛 : そう、この状態になってしまえば……助かる方法は……
[メイン2] 宮下 愛 : ────一つ、ある。
[メイン2]
宮下 愛 :
けれど…それは……
思案しながらも、彼女を横に寝かせまま、上から見下ろす。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
夕焼けの光が、穏乃の顔を照らす。
そして、その唇をも、照らす。
[メイン2] 宮下 愛 : どきり。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 海水で艶めいた、穏乃の小さな唇。
[メイン2] 宮下 愛 : え。あれ……なんだっけ……こんな、シズ……”可愛かった”っけ……?
[メイン2]
宮下 愛 :
可愛いにも2種類、とは言うが。
今のシズ、これは────。
[メイン2]
宮下 愛 :
────あ、いやいや…あくまで、シズとは”友達”……だから、うん……。
[メイン2] 宮下 愛 : そもそも、女同士だから、ヘンに思う事なんて……
[メイン2]
宮下 愛 :
ずきり。
なんだか、そんな事を言うたびに、ヘンに意識してしまう。
……この気分は、小屋で……”みんな”で帰ろう、って言われた…時、から。
[メイン2]
宮下 愛 :
「………」
「ごめん、シズ」
[メイン2] 宮下 愛 : その感情が整理できないまま、ただ────
[メイン2] 宮下 愛 : 夕焼けに光る、彼女の唇に落とす。
[メイン2] 宮下 愛 : ……ちゅ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛の唇に、穏乃の小さな唇の、柔らかな感触が伝わるだろう。
[メイン2] 宮下 愛 : ”太陽”が、落ちる。
[メイン2]
宮下 愛 :
あ……っ、むあ……やわら、かい……
むにむにとしてて、ちっちゃい………
[メイン2]
高鴨穏乃 :
そして、ほんのりとした、穏乃という少女の体温。
山を駆け上ってきた元気な子と言うこともあり、少し温度高めな
そんな温もり。
[メイン2]
宮下 愛 :
それに────暖かい。
……一緒にいて、安心する温かさ……。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
夕焼けに、二人の少女が重なるシルエットが浮かび上がる。
まだ空に浮かび続ける太陽の、沈みかける太陽の光で
海面もキラキラと輝いており。
[メイン2] 宮下 愛 : 「んちゅ、ふうぅ……ん、ぱ……」
[メイン2]
宮下 愛 :
こんな事をしている場合じゃない。
のに、貪る唇が、止まらない。ちゅぱ、ちゅ、と。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
……ん、んぅ……なん、だろ、う………。
ぼんやりと、してて……何も、分からない、のに……。
なんだか……口のあたりが……暖かくて……気持ちいい、ような……。
[メイン2]
宮下 愛 :
時々思い出したかのように、胸へと触れ、海水を押し出す。
そうして、愛の空気を送り込む。
[メイン2] 宮下 愛 : ……シズ、戻ってきて……お願い……!!
[メイン2] 高鴨穏乃 : その切なる願いが届くように─────。
[メイン2] 宮下 愛 : そんな、切望混じった口落とし。
[メイン2] 高鴨穏乃 : ─────『救い』が、ここに。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「っ………!ぶほっ……!!ごほっ!かほっ………!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 胸を激しく上下させながら、気道に詰まった海水を吐き出す穏乃。
[メイン2] 宮下 愛 : 「ふう…… ………!!シズ…!」
[メイン2] 宮下 愛 : 意識が戻ると同時に、慌てたように、唇を離して。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぁっ………!」
[メイン2] 宮下 愛 : けれどすぐさま、それ以上言わずに。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 唇に指を添え、ぽぉっとする。
[メイン2] 宮下 愛 : ぎゅううう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……ほわぁっ!?」
[メイン2] 宮下 愛 : 「…………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 何か言う前に─────愛さんの身体を全身に感じ、びっくりしてしまう。
[メイン2]
宮下 愛 :
ぎゅうう、シズからしたら痛い程に強く強く、抱き締める。
愛の大きな体に、包み込まれるだろう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あうぅっ……!?あ、愛さん、く、苦しいよぅ……!……あは、あははは……!」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
穏乃も、安堵により涙を浮かべながら
愛をぎゅっと抱きしめる。
[メイン2] 宮下 愛 : 「っく……ひ、っく……う、ぅううう……!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「よ゛かった、ほんと、にっ……し、ずぅ……!!!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「っ……!……あ、愛さん……な、泣いて………ぅ、ぅぅ」
[メイン2] 宮下 愛 : 目に熱いものを感じながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛の号泣に、穏乃の涙腺もつられて決壊し始める。
[メイン2]
宮下 愛 :
その思いのまま、声を振り絞る。
喉は枯れて、けれど叫び続ける。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……ご、ごめんなさい……ごめんなさい……また、私……無茶、して……」
[メイン2] 宮下 愛 : 「う、ぅう……だっで………かえって、ほし…く、って……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
ドキドキドキ、と穏乃の心臓の鼓動が
愛の身体へと伝わる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……はい……私は……ちゃんと、帰ってこれました……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あぅ……えっと……そ、その……愛さんの……処置の、おかげで………」
[メイン2] 宮下 愛 : 「…うん、ううん……もう、帰ってきたから、よかった、けどっ……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
先程、唇が塞がっていたことを再度思い浮かべてしまい
顔が真っ赤になりながらも。
[メイン2]
宮下 愛 :
どきどき、伝わる鼓動。
それは────愛と”同じ”。そんな事に気づいて、何だか感情がゆられて。
[メイン2] 宮下 愛 : 「あ、ぅ……あ、アイドルとそういうのが出来るなんて、特別だぞ~?…なんて……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「ぅ、うぅぅ………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 顔を俯かせながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「…………」
[メイン2] 宮下 愛 : そうは言いつつも、シズの顔から照れが伝播する。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………そ、その……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………握手券、っていうか……?……キ、キス券?……は……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……まだ、やってる……かな?……とか……なんちゃって……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 恥ずかしそうに、視線を逸らしながら。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……っ!?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「~~~~~~~~~っ!!……や、やっぱ何でもない!何でもないです!!」
[メイン2] 宮下 愛 : シズの、言葉。心臓がばくばく、高鳴っているのがきっと伝わって。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 顔を真っ赤にしながら、叫び、愛に抱き着かれたまま暴れ出す。
[メイン2] 宮下 愛 : 顔は真っ赤に、口は震えてしまい。
[メイン2] 宮下 愛 : 「…し…シズが、望むなら……その」
[メイン2] 宮下 愛 : 「いくらでも、発券して…あげるよ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………っ……!」
[メイン2] 宮下 愛 : ぎゅっと。
[メイン2] 宮下 愛 : そんな暴れるシズを、離さないように。
[メイン2]
宮下 愛 :
そうして、シズの赤い目を見つめる。
真剣なまなざしで。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
まるで……山頂まで駆け上ったかのように
激しい運動した時のような、そのくらい……心臓が、痛くて。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「っ………あ、愛……さん……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
山を駆け巡るお猿さんな少女は、すっかりとしおらしくなってしまい。
ドキドキと心臓の音を鳴らしながら、愛の黄色い瞳を見つめ返す。
[メイン2]
宮下 愛 :
「……愛さんがしたいな、って……いい……?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「……………」
口を、ぎゅっと結びながら、目をきょろきょろさせながら。
[メイン2] 宮下 愛 : 元気はつらつギャルの少女は、すっかりと大人しく。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「…………シて……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 上目遣いで、愛を見つめる。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……!!!」
[メイン2] 宮下 愛 : そう言う彼女は、潤んだ瞳ぷるんとしたくちび
[メイン2] 宮下 愛 : ちゅうう。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「んむっ………!……んちゅっ、ちゅぅ」
[メイン2] 宮下 愛 : 「んちゅ、うぅう……んむ、ちゅ……」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
愛さんの、あったかくて、柔らかい唇……。
ああ……す、っごい………気持ちいい……全身が、ぴりぴりしちゃうっ……。
[メイン2] 宮下 愛 : 理性が効かない。
[メイン2] 宮下 愛 : 肩をしっかりと掴んで、獣のように捕食するように。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
心地良さに時折体を震わせながら、愛との接吻に、全神経をそこへと集中させる。
空いた手は、手持ち無沙汰を解消させるように、自然の愛の腰の方へ伸び
ぎゅっと抱きしめ。
[メイン2]
宮下 愛 :
「ちゅ、ぅう、んぱ、んむ……」
柔らかな快感を、瞳を閉じて、味わう、貪る、食む。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
そう、まるでこれは、虎さんに捕食されちゃってる、お猿さんだ。
獣同士の交わいだ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「んちゅっ、んむっ……!?んっ……ちゅぅう……!」
すぐ耳元で聞こえる、いやらしい水音に擽られるような気分になり。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
穏乃もまた、愛の唇を求めるように、必死に顔を合わせ
ぐいぐいと口を押す。
[メイン2]
宮下 愛 :
例えアイドルとして踊っても、例え山に登ったとしても。
こんなに呼吸が続かないのに、やめたくないと思えることはない。
[メイン2]
宮下 愛 :
「ん、ふふ……んちゅる、ちゅるう……」
[メイン2] 宮下 愛 : 合わせるように、唇を押し、つけ合う。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
苦しいっ……!でも、離れたくない……!
そんな矛盾の感情の中、愛さん、愛さん、愛さんと頭の中で、何度も連呼する。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
唇の形を変形させ合いながら。
ちょっと舌同士を触れ合いながら。
お互いのビンカンな部分を、混ぜ合う。
[メイン2] 宮下 愛 : シズ、すっごい”可愛い”……ああ、ほんと……。
[メイン2] 宮下 愛 : ぴくりっ、先同士が触れ合い、ふぅっと空気が口から洩れて。
[メイン2] 宮下 愛 : ああ、そういえば……喉、かわいてた、な────
[メイン2] 宮下 愛 : じゅるうう。んぱ、ちゅる。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「んむぅうぅっ……!?」
急に、バキュームのように、口の中の唾液を吸われ
その感覚に背中やお腹のあたりがきゅんっ、となってしまう。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
う、うぅぅ……私の涎、全部……愛さんの、口の中に……
胃の中に……恥ずかしい……。
[メイン2] 宮下 愛 : 喉の渇きを彼女の涎で埋めるように。
[メイン2] 宮下 愛 : 恥かしげな顔を見せる彼女に。
[メイン2] 宮下 愛 : 蕩けた顔で笑いながら。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない気持ちを、筋力に込めながら
愛に抱き着き、そのまま─────ぽさりと、砂浜の方へ
二人とも、くっついたまま倒れる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「う、うぅぅ………ぷはぁっ……」
[メイン2] 宮下 愛 : そのままの勢いで、押し倒されて。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「はぁっ……はぁっ……!……そ、それ……反則、です……」
[メイン2]
宮下 愛 :
「あ~…おいしかった~」
耳元で、そう囁きつつ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
肩で息をしながら、愛の瞳に吸い込まれるように
じっと見つめる。
[メイン2] 宮下 愛 : ぺろり。舌なめずりして。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「ひうぅっ……!?」
びくりと、体が跳ねる。
[メイン2]
宮下 愛 :
「……あ、っ……したく、なっちゃったんだもん…ね」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「あ、あうぅぅ……あ、愛さん………ちょ、ちょっぴり……ううん……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「すごく……エッチ………」
[メイン2] 宮下 愛 : じっと見つめられて、なんだか、目を逸らす。
[メイン2] 宮下 愛 : 「あ、っ……ははは、そう…かな…?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………でも、いいのっ……!」
[メイン2]
宮下 愛 :
えっち、なんて言われて恥ずかしさが高まる。
硬直、なんてして。
[メイン2] 高鴨穏乃 : ぎゅっ、と愛の胸の中に顔を埋めるように、抱き着く。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「…………好き!」
[メイン2] 宮下 愛 : 「わっ……ふふ、いいんだ…?」
[メイン2] 高鴨穏乃 : それだけ告げ、頭を愛の胸にすりすりと擦る。
[メイン2] 宮下 愛 : 「んんん……!」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「いいのっ……!」
[メイン2] 宮下 愛 : な、なんだか恥ずかしい…!それにくすぐったい、し……でも……
[メイン2]
宮下 愛 :
よしよし、と…彼女の頭を撫で。
もっと埋めさせ。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……愛してるよ、シズ」
[メイン2] 宮下 愛 : 愛さんは、なんて言わなかった。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「っ………!!」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
「………んへへへ……!」
より強く、ぎゅっと抱きしめる。
ただ……それだけ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
甘えるように、もっと求めるように
もっと先が欲しいように、色々な想いを込め
ただ、抱き締める。
[メイン2]
宮下 愛 :
あ~……ほんと、可愛いな~……
カッコいい癖に、こういうとこ、ほんと可愛いね~……
[メイン2] 宮下 愛 : その気持ちを全て受け止める。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………私、愛さんと一緒にいられるなら……どこでも、平気な気がしてきました」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
心から、そう思う。
だから、言葉として紡ぐ。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「本当にもう……このまま帰れないことになっちゃっても……もう」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛の首筋に、ちゅっ、と唇を落としながら。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……愛さんがいれば……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ほっぺに、ちゅっ、と。
[メイン2]
宮下 愛 :
「それは……ひゃんっ……」
思わぬ反撃に、声が漏れ出て
[メイン2] 宮下 愛 : 「ひあっ……」
[メイン2] 高鴨穏乃 : その後また、愛さんの胸に、頭をすりすりと擦る。
[メイン2] 宮下 愛 : ぎゅっと、彼女の全部を受け止めて、背中に手を回す。
[メイン2] 宮下 愛 : 「……それは嬉しいけどさ、しーず?」
[メイン2]
高鴨穏乃 :
結局私は……誰かと一緒に遊びたいっていう気持ちが、一番にあって。
でもその誰かは、今までは誰でもいいって思ってたけど
それでもやっぱり……本当に、私のことを想ってくれるような……そういう人だと
……もっともっと、"楽しい"って思えるし……"心地いい"とも思えるし……。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……なぁーに」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 甘えるように、猫なで声を。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
今はもう─────愛さんがいい。
愛さんとこうして、一緒にくっ付いていられる時間が、すっごく好き。
もっともっとくっ付きたいし、もっともっと甘えたい。
[メイン2] 宮下 愛 : くるり、体の向きを変えて。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
友愛とか、家族愛とか、そういうのじゃなくて、きっとこれは……
……きっと、きっと………『恋』……なのかなって。
[メイン2] 宮下 愛 : 「”みんな”と、帰るためにも、がんばりたいな」
[メイン2] 宮下 愛 : 「シズと、いっしょにさ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「………」
[メイン2] 高鴨穏乃 : ぎゅっ、と抱き締める。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「……今は私だけ見て」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「今だけで、いいから」
[メイン2] 宮下 愛 : 「……じゃあ」
[メイン2] 宮下 愛 : とすっ。
[メイン2] 宮下 愛 : 砂浜に、手を乗せて。
[メイン2] 宮下 愛 : シズに覆いかぶさる。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「わっ………!!?」
[メイン2] 宮下 愛 : 「ずっと、見させて?」
[メイン2]
宮下 愛 :
隙間から差し込む、落ちかける”太陽”が。
愛を照らす。
[メイン2] 高鴨穏乃 : 「…………いーよっ」
[メイン2] 高鴨穏乃 : 愛が、咲く。
[メイン2]
宮下 愛 :
よくないな、こんな事。
年下の子、それも皆のシズ、なのにさ。ずっと可愛がっちゃって、独占しちゃって、もっともっと、やらなきゃいけないことあるのに。
[メイン2]
宮下 愛 :
ああでも、”心地いい”。”楽しい”。
きっとどんな事よりも、最高に楽しいって思える。そんな、『楽しいの天才』は……
[メイン2] 宮下 愛 : もう一人いた。
[メイン2] 宮下 愛 : これが、多分……愛。
[メイン2] 高鴨穏乃 : そう─────愛。きっとこれが、愛。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
『心』を『受』け入れ合う。
そう書いて、『愛』。
じゃあこれは、そうなんだよ。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
これが初めての恋だけど。でも─────。
こんなに胸が熱くなるのに、これが恋でも愛でも無いとしたら、一体何になるの?
[メイン2]
高鴨穏乃 :
だから私は、信じる。この感情の正体とか。
心の行先とか。
今目の前にいる、ドキドキしちゃうような、カッコよくて可愛い、動物さんを。
[メイン2] 高鴨穏乃 : だから私はまた─────。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
愛の頬へ手を伸ばし、重ね合わせ。
ゆっくりと顎を、移動し─────。
[メイン2]
高鴨穏乃 :
ラブライブ
─────"愛の演奏"を。
[メイン2] 宮下 愛 : けれどこのライブは貸し切り。二人っきりの特別ツアー。
[メイン2] 宮下 愛 : だから、今だけはこの音を楽しませて。
[メイン2]
宮下 愛 :
目の前に咲く花との、心音と水音奏でるデュオライブ。
決して、それ以外は出さないように。
[メイン2]
宮下 愛 :
静かに、穏やかに。ね?
[メイン2] 宮下 愛 : ────シズ、だけにっ!
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2] 宮下 愛 :
[メイン2] 宮下 愛 :